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リー・リトナー / "SMOKEN 'N' MIRRORS" [Contemporary / Fusion]

Smoke_n_Mirrors

Artist : Lee Ritenour
Title : "SMOKIN' N' MIRRORS"
Release : 2006
Style : Contemporary jazz / Fusion (guitar)
jazz度数・・・★★★☆☆ (3/5p)
お気に入り度数・・・ ※最高は5つ
Situation・・・
抜粋ポイント
  • リチャード・ボナが参加するなどアフリカンな新味を程良く加えた4年振りの新作。ジャズ、ポップ、ブラジルと彩りも鮮やかなリーならではのワールド・フレイヴァー
  • 旧友パトリース・ラッシェン本人も参加した彼女の懐かしいヒット・チューン、“Forget Me Nots”のカヴァーが嬉しい!
 スタジオライブのDVD作品『OVERTIME』、2005年の来日公演とジェントルソウツを意識したフュージョン原点回帰が大好評だったリー・リトナー。並のアーティストならそこでつまらない色気を出して柳の下でもう一丁ってところなのだろうが、さすがに彼は違った。常にシーンのトップに居てトレンドをリードして来た矜持と自負がある。一ところにずっとは留まらないのがリーなのだ。その彼が今度加えることにした味付けはなんとアフリカン!。さてさて、その出来映えや如何に。
 



 正直なところ、ここ最近はかつてフュージョンと呼ばれたジャンルに属するアーティストの作品を聴いてもがっかりすることが多かった。スムース・ジャズのフォーマットを意識するあまり、フュージョン本来の自由なミクスチャー感覚は薄れ、テクニカルなソロなどジャズの重要要素であるインプロビゼイションも徹底排除。そこにあるのは耳あたりの柔らかなメロディーとムードだけ。4分程度にきっちり枠決めされた定型ラウンジ・ミュージック。そんなもの聴いて、一体何が面白いの?。

 思っていることはみな同じ。案の定、熱心なインストゥルメンタル音楽のファンの心はフュージョンから離れ始めてしまった。

 そもそもフュージョンを聴いている人間は自分が楽器を演奏している場合が多い。外野はテクニック重視で判りにくいなどと批判するけれど、高度な音楽性と技術を極め、もちろんハートも注ぎ込み、それを洗練された音楽としてリスナーに提示出来るからからこそミュージシャンはアーティスト=芸術家となり、そのことを理解するファンたちから敬意と賛辞を得ることが出来るのだ。

 本来「自由」であることが魅力のジャズ。フュージョンにはそのジャズの要素は必要不可分なもの。それなのにその自由が奪われてしまっては、まるで動物園の檻の中に飼われる猛獣か、カゴの中でしか飛べない鳥と同じではないか。

 そんな骨抜きにされたヤワな音楽と一緒にしてくれるな。リー・リトナーはかねてから、そう考えていたに違いない。彼はずっと昔から、高い音楽性を保ちつつ、ポピュラーであることとテクニカルな音楽との心地良い折り合いを探り続けて来たアーティストなのだ。ファンが聴いて喜ぶ音楽を作り上げよう努力するのは当たり前のこと。でも彼にとって音楽はそれだけのものじゃない。大好きな音楽仲間と長年友情を培ったフレンドシップを再確認する手段であり、常に新しい何かを発見し、育て、広くシーンへ知らしめる為の場でもあるのだ。

 そうしてリーは今回もまた新しい世界を一つ、自分のカラーに取り込むことを選んでみせた。それが意外や、なんとアフリカン・カラーだったワケ。

 ただ全面をアフリカン一色にベタ塗りするわけでなく、いわば程良いエッセンスの抽出と云うのが正解だろうか。アフリカ言語で歌われる小曲⑦もインターメッツォの様な趣で、作中の好いアクセントになっている。またダニエル・ジョビン(カルロスの孫)とジョイスのデュエットが聴けるスロウ・ボッサの⑤、完全にジャズ風味のフレディー・ハバードの⑧と様々なジャンルの楽曲が違和感なく並び聴けるのは、サウンド・スタイリスト、リーならではの構成だ。

 このようにジャズ、LAフュージョン、ブラジルと彼の音楽性は元よりとても幅広い。しかし、この新作の発表までに4年を要したことは何を意味していたのだろう。もしかしたら、彼自身も自分の音楽やカテゴライズされるフュージョンと云うものにある種の行き詰まりやマンネリを感じていたからこそ4年も時間が必要だったのでは?、と僕には思えてしまったのだ。

 そんな閉塞感に再びフレッシュな空気を送り込んでくれたのが、前述の『OVERTIME』のレコーディング・セッションやツアーだったのではなかろうか。2005年の来日公演(※参照:http://ilsale.at.webry.info/200506/article_8.html)をご覧になった方は覚えておられると思う。アレックス・アクーニャがカホン、アーニー・ワッツがカバサ、パトリース・ラッシェンがマラカスを持って嬉々として演奏していたのを。あんな「遊び」が楽しかったからこそ、今回リーは様々なパーカッションのサウンドを取り入れることを思いつき、結果アフリカン・テイストを導入するに至ったとまで考えるのは、ちょっぴり深読みし過ぎだろうか。

 加えて、自身の初期の代表曲である“CAPTAIN FINGERS”など、テクニカルで勢いのある王道フュージョンとも云える楽曲を懐かしい旧友達と演奏することで、リーの中で忘れかけていた何かを思い出したのではないかと考えるのだ。

 そんな何かを曲として形にしたのが⑭。リチャード・ボナとのキメキメのユニゾンの上を勢いよく疾走する伸びやかなGibson335のサウンド。ボナも彼ならではのスキャット入り超絶ソロでリーを煽る。ここにアフリカ風味を更にブレンドするシーラEのパーカッション。そうそう、こんなリトナーがもっともっと聴きたかったんだよ!と喝采を送りたくなる。

 そして、リーのアルバムと云えば必ず1曲は入れて欲しいセンスの良い歌もの。今回は大喜びしているメロウ・グルーヴ・ファンが多いのではないだろうか、のパトリースの大ヒット・チューン“FORGET ME NOTS(わすれな草)”。これ、せっかくパトリース連れて来てるんだから去年のライブで演ってくれたらいいのに・・・なんて思っていたのだよ。まさかまさかのカヴァーは、こちらにもやはりアフリカのスパイスがしっかり効かされている。リードヴォーカルは今回⑦、⑨でもフィーチャーれている注目の女性ヴォーカリストは、リーが例えて曰く「アフリカのシャーデー」と呼ぶザマジョビ。作者のパトリース本人もアレンジから参加し、バッキング・ヴォーカルを入れている。



 旧友達との再会が新鮮な刺激となり、アフリカン・フレイヴァーを新たに加えてまた一歩違った領域に踏み出したリー・リトナー。彼の今作のようなアルバムが再び増えてくれれば、今更のフュージョンだってまんざらでもない。後は他のミュージシャン達がどう思うか、だよね。

 尚、ラストの15曲目は日本盤ボーナス・トラックだがここでドラムを担当しているのはリーの愛息ウエスリー君。なんとまだ12歳なんだとか。カエルの子はカエルと云うか、さすがは英才教育の賜(笑)。



スモーク・アンド・ミラーズ スモーク・アンド・ミラーズ
リー・リトナー (2006/08/23)
ビクターエンタテインメント

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01. Smoke' N' Mirrors / Lee Ritenour
02. Capetown / Lee Ritenour
03. Southwest Passage / Dave Grusin
04. Waterz Edge / Lee Ritenour
05. Blue Days (Dias Azuis) / Daniel Jobim
06. Spellbinder / Gabor Szabo
07. Memeza / Zamajobe & Kanesha Kamwendo
08. Povo / Freddie Hubbard
09. Lovely Day / Bill Withers & Skip Scarborough
10. Township / Lee Ritenour
11. Forget Me Nots / Patrice Rushen, Fred Washington & Terry McFadden
12. Stone Cool / Lee & Wesley Ritenour
13. Motherland / Lee Ritenour
14. 4 1/2 Storm / Lee Ritenour
15. Wes Nile / Lee Ritenour (bonus Track)

■Musicians
Lee Ritenour : guitars
Abraham Laboriel : bass on 12
Alex Acuna : drums and percussion
Alberto Lopez : wood percussion
Brian Bromberg : acoustic bass on 6
Daniel Jobim : lead vocal on 5
Danilo Caymmi : flutes on 5
Dave Grusin : acoustic piano on 3 & 9
Erik Pilani Paliani : acoustic & Electric guitar on 7, 9, 11
John Patitucci : acoustic bass on 3 & 5
Joyce : lead vocal on 5
Mea Noite : percussion : percussion on 7
Melvin Davis : bass on 8 & 13
Oscar Seaton : drums on 11 & 13
Patrice Rushen : Fender Rhodes piano, organ solo, background vocal
Paulinho Da Costa : percussion
Richard Bona : bass on 1, 2, 4, 10, 14
Satnam Ramgotra
Sheila E. : percussion
Steve Tavaliogne
Tita Lima
Vinnie Colaiuta : drums on 1, 2, 3, 4, 6, 9, 10, 14
Wesley Ritenour : drums on 7 & 15
Zamajobe : Lead vocal on 7, 9, 11



本文に関連するアーティスト、アルバム


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♪パトリースの大ヒット・チューン“FORGET ME NOTS”のオリジナル収録
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