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リズ・ライト / "THE ORCHARD" [Adult Contemporary]

Lizz Wright_Orchard.jpg

Artist : Lizz Wright
Title : "THE ORCHARD"
Release : 2008
Style : Adult Contemporary (female Vocal)
jazzっぽさ・・・★☆☆☆☆ (1/5p)
お気に入り度数・・・ ※最高は5つ


 味わい深いスピリチュアルな歌唱力で心に染み入る歌を聴かせる若手実力派ディーヴァ、リズ・ライトの通算3枚目のフル・アルバムがリリースされた。リズ本人が作曲に携わる比重が増し、12曲中9曲がオリジナル楽曲となった新作は、ジャズ色こそさらに薄くなってしまった感もあるが、彼女のホーム・グランドであるジョージアのフィーリングを強く意識し、今まで以上にアーシーな味わいの濃い作品に仕上げられている。綿花畑の緑の中にひとり立ち、まっすぐに空を見上げる彼女の姿は、まさに大地に根差した南部のソウルを体現しているかのようだ。



 もう丸三年以上が経ってしまったけど、2004年12月に横浜のMotion Blueで観たリズのライブが忘れられない。あれからと云うもの、彼女の若さに似合わずしっとり落ち着いた佇まいと、凛とした歌いっぷりにすっかり僕は惚れ込んでしまっている(※単に握手して貰って嬉しかったから、と云う事情はさておき・・・^^;)。しかし、この新作に於いて、リズの目指す音楽がどんな方面へ向かっているのか、ちょっとばかり、不安も感じていた。

 それと云うのも、前作『DREAMING WIDE AWAKE』はノラ・ジョーンズやk.d.ラングのプロデューサーとしても知られるクレイグ・ストリートが制作に当たった関係で、ジェシ・ハリスの楽曲を歌うなど、どうもノラのフォロワーとして売り出したいレコード会社の意向がミエミエで、決して悪いアルバムではなかったのに、ヒネクレ者の僕は素直に楽しめなかった部分が大きかった。僕が好ましいと思うリズのイメージよりも、アルバムの指針がフォーキー(それもちょっぴり白っぽく)に振れ過ぎていた様に思えてしまったのだ。

 でもね、それはノラが聴ける(=好みの)リスナーにしてみれば悪い方向ではなかったハズ。実際、ジャズ色の強かったデビュー作より聴きやすい!との好意的な評価もあったみたいで、寧ろ、ノラがフォーク過ぎて・・・なんて敬遠してる僕の方がよっぽども少数派の意見だったりするんだよなぁ・・・(苦笑)。

 で、実際この新作の内容がどんなふうになったかと云うと、プロデューサーは前作と同様にクレイグ・ストリートを再起用しているものの、作曲段階からリズ本人が携わる比率が増えた(前作ではボーナス・トラックを含めても3曲のみ)事に因り、グッと南部寄りのブラック・テイストが濃くなった。前作のノラに近い、軽めなフォーキー路線よりも、僕にとってはずっと自然なリズの歌が楽しめるものになっているのだ。

 本人も今回は特に自分が育った環境(=故郷)に深く根差した作品作りを目指したようで、レコーディングの初期段階から彼女自らの意図をスタッフに事細かに説明し、デビュー3作目にして初めて自分のやりたいスタイルを通し切れたのだと云う。

 スチール弦のアコースティック・ギターがアーシーなストロークを奏で、オルガンと歪んだスライド・ギターが気怠く乾いた空気を運んで来る①、スパニッシュを思わせるメランコリックなギターが「クレオール」と云う言葉を思い起こさせる②、スモーキーなブルーズの③と、立て続けに南部的ナンバーが並ぶ。アカペラ・ソロで始まる④のスロウ・ナンバーでホッと一息吐くまでは、かなりディープな「黒さ」でシリアスに迫って来るのだ。なるほど、彼女はこう云う音楽をレコーディングしたかったワケなんだね。

 このアルバムを初めて全て聴いてみた時の素直な気持ちを告白してしまうと、今まで以上に地味だなぁ~なんて思ってしまったのだけど、元々リズの歌は繰り返し聴いてこそ深く染み込んでくるタイプのもの。もうちょっとだけ、ジャズ寄りであってくれたなら(どうせ南部がテーマならジョー・サンプルをゲストに、なんてね)と思わないワケじゃないけれど、彼女はまだまだ若いから、いろんなタイプの音楽的をレコーディングするのも悪いことじゃないだろう。ここでしっかりとした根っこを聴かせてくれたから、また次の展開も楽しみと云うものだ。
 
 ま、所詮は何だかんだとご託を云いながら、リズの手の感触が今も忘れられない僕は、この先も多分、ず~っと彼女のファンでいるんだろうけどね、ごく単純に(^^;。

 一応、アダルト・コンテンポラリ的な耳で気に入り曲を挙げておくと、比較的軽やかにファルセットを用いて聴かせる⑤、深く美しい歌声がシャーデーを思わせる⑧が僕の好み。是非ご一聴を。




アルバム・ジャケットをクリックすると試聴可能なAmazonのサイトが別ウィンドウで開きます

The OrchardThe Orchard
(2008/02/26)
Lizz Wright

商品詳細を見る


01. Coming Home
02. My Heart
03. I Idolize You
04. Hey Mann
05. Another Angel
06. When I Fall
07. Leave Me Standing Alone
08. Speak Your Heart
09. This Is
10. Song For Mia
11. Thank You
12. Strange

13. It Makes No Difference
※輸入(E.U.)盤はジャケットに12曲目までしかクレジットがありませんが、シークレット・トラック扱いで全13曲収録されています。

■Musician

Lizz Wright : vocal
Chris Bruce : acoustic guitar, electric guitar, bass
Toshi Ragon : acoustic guitar, backing vocal
Oren Bloedow : acoustic guitar, electric guitar
Kenny Banks : piano
Patrick Warren : keys
Glenn Patscha : keys, backing vocal(6)
Larry Cambell : pedal steel(4), mandlin(10)
John Convertino : drums, percussion, vibes(12)
Ben Perowsky : drums(4)
Larry Eagle : drums, percussion(10)
and other...

produced by Craig Street



 リズ・ライトに関連する過去記事

・『リズ・ライト LIVE@Motion Blue yokohama 2004』
http://ilsale.blog55.fc2.com/blog-entry-31.html

Official web site : http://www.lizzwright.net/
※音が出ますのでご注意を。新作曲の一部が高音質にて試聴が可能です。

リズ・ライト、オリジナル・アルバム及び参加作品

2003年リリースのデビュー・アルバム。トミー・リピューマ、ブライアン・ブレイド制作。
SaltSalt
(2003/05/13)
Lizz Wright

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2005年リリースのセカンド・アルバム
Dreaming Wide AwakeDreaming Wide Awake
(2005/06/14)
Lizz Wright

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ジェームス・テイラーの③をリード・ヴォーカルにてカヴァー
クローサークローサー
(2004/11/21)
デヴィッド・サンボーン、リズ・ライト 他

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ソロ・デビュー前にジャズ・ファンの耳目を集めた作品。フィーチャリング・ヴォーカリストとして2曲に客演。
ザ・ピーカン・トゥリーザ・ピーカン・トゥリー
(2002/03/22)
ジョー・サンプル

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