ニクラス・ウインター / "BEAUTOPIA" [Contemporary / Fusion]
Artist : Niklas Winter
Title : "BEAUTOPIA"
Release : 2007
Style : Instrumental jazz / fusion (guitar)
◆jazz度数・・・★★★☆☆ (3/5p)
◆お気に入り度数・・・ ※最高は5つ
日本でも2006年にファイヴ・コーナーズ・クインテットがブレイクし、その活発なジャズ・シーンが一躍注目されることとなった北欧の国・フィンランドから、今度はヨーロピアン・ニュー・ジャズの実力派ギタリスト、ニクラス・ウインターの日本デビュー・アルバムが届けられた。現代的なクールネス、テクニカルで硬質な先鋭感などを有しながらも、根幹としてメロディアスであることに注力した彼の作品は、何かしら美しい光景を見て懐かしく感じる様な感覚も併せて内包し、我々日本人にとって、どこか情緒的な親近感の持てる演奏が展開されている。それと云うのも、この作品の全11曲中、7曲で演奏しているニクラス・ウインター・カルテット(NWQ)は日欧混成チームであり、元々は今作にも参加しているバークリー音楽院時代の学友、日本人ベーシストの島秀行と一緒に組んだユニットが活動母体となっているのだ。
アルバム名義こそニクラス個人のものとなってはいるが、このユニットでフィンランドと日本をまたに掛けてライブ・ツアーも行うなど、演奏には単なるレコーディング・セッションを越えて、グループ的な熟成感も感じさせ、さながらニクラスがリーダーの日欧混成グループの感すら漂う。
そのバンド・コンセプトこそが「メロディアスなジャズをタイトなリズムとパワフルなエネルギーで演奏すること」なのだそうで、なるほど、そこら辺りが日本人と北欧人が共に好む傾向にあるという、メランコリックな情緒性や清々しい透明感を感じさせてくれているのだろう。島の作曲ナンバーであるラストの⑪など、神秘的で静謐なフィンランドの森の迷い込んだかのようだ。美しい調べのピアノはこれまた日本人ピアニストの新澤健一郎によるもの。
ニクラスは1969年生まれと、まさにパット・メセニー、ジョン・スコフィールドらを聴いてジャズとギターにのめり込んでいった世代らしく、そのどちらもをフェイヴァリット・ミュージシャンとして挙げている。なるほど、確かにニクラスのギターには彼等二人の影響がところどころで色濃く滲んでいる。例えば①は『ELECTORIC OUTLET』(1984)や『STILL WARM / 鯔背』(1986)の頃の、まだマイルス譲りの黒さ(=ファンク)を纏ったジョン・スコを思い起こさせる作風だし、生ギターのストロークが心地良い疾走感を醸し出す④には『FIRST CIRCLE』(1984)など、80年代前半のまだ瑞々しかったパットの演奏を思い出さずにはいられない。
また3曲において、冒頭に名を出したファイヴ・コーナー・クインテットのユッカ・エスコラ(トランペット、フリューゲルホーン)が客演。二人はフィンランドでは共演を重ねていたが、一緒のレコーディングは今回が初めてとのこと。前述の①に続き、クラブ・ジャズ的な響きの②、スリリングなスピード感に溢れるモダン・スタイル⑦ではフィンランド・セッション組であるSeppo Kantonenの流麗なピアノ、Timo HirvonenのEベース・ソロも聴き物。
⑨はニクラス唯一の独演曲で、生涯を通じて即興演奏を追求し、2005年に他界したギタリストに捧げるオマージュ(ライナー・ノーツより)となっていて、軽くディレイを効かせたナチュラルな、いかにもハコ物ギターらしい音色のシングル・トーンを中心としたメロディアスなインプロヴィゼイション・ソロを聴かせる。
01. EVERYTHING YOU NEED IS HERE ...feat.Jukka Eskola
02. BEAUTOPIA ...feat.Jukka Eskola
03. IF YOU WAIT LONG ENOUGH (Part 1)
04. IF YOU WAIT LONG ENOUGH (Part 2)
05. IF YOU WAIT LONG ENOUGH (Part 3)
06. DOWNHILL
07. MAGNETIC ...feat.Jukka Eskola
08. SLOWHAND
09. FOR DEREK BAILEY
10. KRONOS
11. INNER CRYSTAL
■Musicians
Niklas Winter : guitar
Jukka Eskola Trumpet,Fluehgelhorn)
新澤健一郎(Piano)
島秀行(Bass)
Seppo Kantonen(Grand Piano)
Timo Hirvonen(Electric Bass)
Toni Piorthen(Drums&Percussions
◆本文中に登場した作品
♪ファイヴ・コーナー・クインテット
♪ジョン・スコフィールド
♪パット・メセニー・グループ
2008-03-20 23:42
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