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スティーヴ・カーン / "BORROWED TIME" [Contemporary / Fusion]

Borrowed Time

Artist : Steve Khan
Title : "BORROWED TIME"
Release : 2007
Style : Contemporary Jazz (guitar)
jazzっぽさ・・・★★★★★ (5/5p)
お気に入り度数・・・ ※最高は5つ

 10年振りにジャケットを彩るジャン.ミッシェル・フォロンの絵が懐かしくも嬉しいステーヴ・カーンの新作。今回もジャック・ディジョネット(Dr)、ジョン・パティトゥッチ(W.Bass)ら“GOT MY MENTAL”(1997)で組んだ腕利きリズム・セクションでのトリオを軸として、昨今のトレンドとは確実に一線を画すカーン独特の哲学的音楽世界を展開している。とは云っても、それは決して気難しいものでない。この新作では今まで以上に鮮明にラテン・フィーリングが採り入れられ、難解に思われがちな彼の音楽に明るさと親しみやすさを加えているのだ。

Steve Khan's Official web site
http://www.stevekhan.com/index.html




 スティーヴ・カーンの演奏にしては、などと云ってしまって良いのか果たして迷うところだけど、随分とユーモラスで楽しげなラテン・アレンジのモンク①からアルバムはスタートする。とは云え、原曲のイメージは踏襲しつつも2コーラス目からはそのメロディーから自らを早々に解放してインプロヴィゼーションに突入。バッキングがそのままソロに発展していくかの様な独特のカーン節は今作でも健在。その昔にアイウィットネスを組んだ頃にインタビューで語っていた、ピアノやキーボードを加えず、ハーモニーに束縛されることなく自由にサウンドを展開すると云うコンセプトが今もそのまま残されているかの様な音造りだ。後半のジャック・ディジョネットのドラム・プレイがいきなり素晴らしい。

 ②はカーンが敬愛しているオーネット・コールマンのお蔵入りだったと云うレア曲。如何にもオーネットらしいウネウネとした、一筋縄でいかないメロディーがカーンのギターで奏でられる。パティトゥッチのかなり長いW-bassソロが聴き物。

 ③美しいメロディを持ったバラッドはカーンのオリジナルで、珍しくトレモロを使い、シンセも入ったコンテンポラリな味付け。久々の共演(カーンは元々ブレッカー・ブラザースのギタリスト)というランディ・ブレッカーのフリューゲル・ホーンのこれまた美しいソロがたっぷりと聴ける。それを引き継ぐカーンのソロはアコースティック・ギターでのメランコリックなもの。

 ④インド音楽、それも神秘的かつスピリチュアルで厳かな導入部が3分を超え、いきなりだとかなり戸惑うかも。やがてパティトゥッチのベースに乗せ本テーマに入るとボブ・ミンツァーのバス・クラリネットとカーンのギターがユニゾンを執るのだが、ある意味曲調としてはこれが今作で一番にアイウィットネス的にも思えてくる摩訶不思議なナンバー。元々はカーンがまだUCLAの学生だった頃にインド音楽とジャズの融合を試みて作った曲なんだとか。

 ⑥はマッコイ・タイナー作のアップ・テンポ。パティトゥッチ、ディジョネット&マノロ・バドレーナ(per)のリズム隊が抜群に格好好いマイナー曲。カーンはシリアスで緊張感に満ちた演奏。実は前作『グリーン・フィールド』(2006)をレコーディングした時に収録時間の関係でアルバムから洩れてしまっていた曲なのだとか。とは云え、僕はこの曲が一番に気に入っているのだが・・・(^^;。

 お次の⑦は僕が大好きなリチャード・ロジャース&ロレンツォ・ハートの黄金コンビのナンバーなのだが、この曲は今一つ馴染みがなくて(汗)。この曲でのカーンは軽妙なラテンのリズムに乗せてナイロン弦を爪弾いているのだが、エレピのバッキングが爽やか過ぎて、何だかカーンらしくもない気も(笑)。この曲で再びランディ・ブレッカーのソロをフィーチャー。

 本作唯一収録のヴォーカル・ナンバー⑧は一体どう云う繋がりでの起用?と吃驚してしまったベレーザこと麗しの美人ヴォーカリスト、ガブリエラ・アンダース。サウダージなボサノヴァ風味たっぷりのメロウ・ナンバー。でも付けた歌詞はスペイン語なんだそうな。和訳はおろか英訳も無いので残念ながら何を歌っているのか分かりません(苦笑)。カーンはここでもナイロン弦を使用。




 実は正直に云ってしまうと、僕は前作『グリーン・フィールド』を気に掛けていつつも買っていない(=聴いていない)。それと云うのも、あのアルバムのジャケットにはフォロンの絵が使われなかったから。カーンのアルバムにはフォロンの絵が無いと何かが足りなく思えてしまったからなのだ。それは音楽と関係無いだろうとお叱りを受けるかも知れないが、僕にとってはカーンの音楽とフォロンの絵は不可分なもの。常に一緒であって欲しいものなのだ。

 ここで今からフォロンの絵に対する思い入れを書いてしまうと、きっと文章がこの2倍にもなってしまいそうなので割愛させて頂きますが、もしフォロンの絵がお好きでしたら、こちらも読んで頂けると嬉しいです。まぁ、カーンのアルバムを並べてあるだけなんですけどね(^^;。
http://blog.so-net.ne.jp/ilsale-diary/2007-05-31


 

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01. I MEAN YOU (Thelonious Monk-Coleman Hawkins)
02. MR.AND MRS.PEOPLE (Ornet Coleman)
03. FACE VALUE (Steve Khan)
04. EL FAQUIR (Steve Khan)
05. YOU'RE MY GIRL (Sammy Khan-Jules Styne)
06. BLUES FOR BALL (McCoy Tyner)
07. HAVE YOU MET MISS JONES? (Richard Rodgers-Lorenz Hart)
08. LUNA Y ARENA(MOON AND SAND) (Alec Wilder-William Engvick-Morty Palitz)
09. HYMN SONG (McCoy Tyner)

■Musicians
スティーヴ・カーン(g)
ジャック・ディジョネット(ds)
ジョン・パティトゥッチ(ac-b)
マノロ・バドレーナ(per,voice)
ラルフ・イリザリー(timbal)
ロベルト・キンテーロ(conga,per)
ボブ・ミンツァー(b-cl)
バダル・ロイ(tabla)
ジータ・ロイ(tamboura)
ランディ・ブレッカー(flh)
ロブ・マウンジー(kb)
ルーベン・ロドリゲス(b)
マーク・キニョーネス(timbal)
ボビー・アレンデ(conga)
ガブリエラ・アンダース(vo)

Recording・・・2006年11月27日、2007年1月9日
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