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セリア(Silje Nergaard) / "at first light" [Adult Contemporary]

Silje_AT FIRST LIGHT

Artist : Silje Nergaard
Title : "AT FIRST LIGHT"
Release : 2001
Style : Adult Contemporary (Female Vocal)

jazz度数・・・★★★☆☆ (3/5p)
お気に入り度数・・・ ※最高は5つ

抜粋ポイント
  • かつてパット・メセニーのプロデュースでデビューし、日本でもヒットを飛ばしたノルウェイの実力派シンガー&ソング・ライターのジャズ傾倒ポップ・アルバム
  • オリジナルが12曲中9曲で基本的にはアコースティックなサウンド中心。乗せる歌声は、コケティッシュでありながらもハナにつかない爽やかな可愛らしさ。ジャズ系に寄ったAORファンにもお薦め
 
 「え~、ほんとかよ~!。」PCの前でひとり、思わず声に出してしまったくらいがっくり来てしまった。これだけ世の情報化が進んでいるというのに、いったい彼女の来日情報はどんなメディアにどのくらい流されていたのだろう。気が付いてさえいれば、何を差し置いても、絶対に観に行きたかったのになあ・・・。来日コンサートが終わって1ヶ月後に気付くなんて(泣)

※ユニバーサル・ミュージック :
セリア→http://www.universal-music.co.jp/jazz/special/uccm1034/index.html




 僕が逢えずにがっかりさせられている相手は、ノルウェイの女性ポップ/ジャズ・シンガーのシリエ・ネルゴール。この名前で書くと、ほとんど「誰それ?」ってリアクションしか返ってこないと思う。でも1990年にパット・メセニーの助力をもって、彼の英国在住の友人であるリチャード・ナイルズのプロデュースに依り、広大な草原を駆け抜ける風のように爽やかなデビュー・チュ-ン、“TELL ME WHERE YOU'RE GOING ”で鮮やかにシーンに登場した「セリア」と言えばご存じの方も多いだろう。シリエ・ネルゴールは実際の発音に基づいた表記で、彼女の名はここ数年フルネームでこちらの表記が為されていたのだが、やはり日本ではセリアの方が通りがいいのだろう。最近は再びセリアと記されるようになっている。


 セリアのデビュー曲“TELL ME WHERE YOU'RE GOING ”には、ノーマル、ロングに加えてアコースティックと言う、まさにパット・メセニー・バージョンとストレートに呼んだ方がぴったりの3つ目のバージョンがあった。ラジオで主にヘヴィーローテションされていたのは、マンドリンやハーモニカのサウンドがカントリーなムードも醸し出していたノーマル・バージョンだったのだろうが、僕はもうパットのバージョンばかり繰り返し繰り返し、本当によく聴いたものだ。

 この曲を、好く晴れた日曜の午後に、窓をあけたクルマの中で風を感じながら聴くのがなにより好きだった。セリアの瑞々しく澄んだ歌声に、ディレイの深く効いたパット独特の透明感のあるギターの音色。スチール弦のカッティング・ストロークが『アメリカン・ガレージ』あたりの雰囲気を漂わせ、映像的でスケールの大きなそのサウンドはまさにパットの世界そのもの。タイトルもどことなく『OFFRAMP』“ARE YOU GOING WITH ME?”に通ずる親しみを抱かせるものだった。パットの音楽が好きで好きでたまらなかったセリアの、精一杯の彼へのオマージュだったんだろうなぁ。


 デビュー作から3作を、当時活動拠点としていた英国でリリースした後、セリアは母国ノルウェイへ戻るのだが、彼女はここから次第にジャズ色を深めて行く。数枚のオリジナルアルバムを経て、2000年にユニヴァーサル・ノルウェイから発表された『PORT OF CALL』は、オリジナルを抑えカヴァー中心としたことから、ほぼ完全な「jazz」と言ってしまって差し支えのない作品に仕上がった。声質も変わり、デビュー当時の爽やかな歌い方から、意図的に変化を遂げてきたのか?、キュートになり甘みも増した。今の彼女のこの歌い方に対して、ブロッサム・ディアリが引き合いに出されることが多いらしいけれど、僕もなるほど、そう思う。それでも、囁く猫なで声のブロッサムではなく、中低音で小粋にスィングする“THE MIDDLE OF LOVE”(※参照『WHISPER FOR YOU』)あたりを歌う、あまりベタつかないブロッサムを思い描いて欲しい。歌い方や声は甘いけれど、決していつもオトコの肩に枝垂れるようなイメージでなく、クールな芯はちゃんと通っているのだ。

 続く2001年作のこの『at first light』は一転、オリジナルの配分を増やしてはいるがピアノ、アコースティック・ベース、ドラムのレギュラートリオの演奏を基本にして成り立っており、これまたjazz度の高い作品だ。僕はこれをjazzだと言いたいし、誰にはばかるコト無くそう思うけれど、アタマの固い人は「かなりjazzっぽいポップスだね」なんて言うかもしれないけどね(苦笑)。jazzを難しく捉えたくない、優しく心地良い音楽が大好きな人に是非お勧めしたい1枚!。

 少々だが好きな曲の印象にも触れておこう。

“THERE'S ALWAYS A FIRST TIME”
オープニングはゆったりとしたストリングスに乗せてセリアがムーディに歌う。マグナス・リングレンのテナーサックスが入ることでグッとアダルトなムードが盛り上がるジャズ・チューン。

“BE STILL MY HEART”
マイナーのバラッドで、セリアによる多重コーラスパート、ティル・ブレナーの哀愁を帯びたトランペット・ソロがなんとも美しい。センチメンタル・ムードに溢れたもの悲しげな旋律だが、このアルバムの1、2を競う佳曲。

“LET THERE BE LOVE”
一転して何ともキュートなナンバー。イントロのテナーのブレスがかすれる具合も気持ち好いこの4ビートは1940年(イアン・グランド作詞&ライオネル・ランド作曲)の作品だそうだ。このハッピーなオールド・スイングは歌詞がまた楽しくて、彼女のちょっと舌足らずな声ととてもよく似合っている。僕がこのアルバムで一番好きな曲。因みにチリコンカルネってのは、メキシコ風の豆と肉(挽肉が多いみたい)のピリ辛チリ煮込みのコト。

 「あなたはそこにいて 私もそこにいさせて オイスターも一緒に 海の底でね  風も吹いているの 時には雨もいいわ チリコンカルネと弾けるシャンパンもね  でも 何をおいても そこには愛がなくっちゃいけないの 愛がなくちゃね」

 但し、チリコンカルネとシャンパンの取り合わせはどうかなぁ?・・・(^^;>アメリカの作家の曲だからね(笑)。

“KEEP ON BACKING LOSERS”
エレピとホーンがファンキーに響く、ややアンニュイなオリジナル。同じくノルウェイ出身でブルーノートから作品を出していたエリン・エリクセンあたりのサウンドを思い起こす、北欧風club-jazzサウンド。

“JAPANESE BLUE”
日本贔屓のセリアは以前にも京都を歌にしていたが今回は「藍」をテーマに深く静かなバラッドを歌っている。ミュートして尺八をイメージさせるブロウのArve Henriksenのトランペットが面白い。


 それにしても、返す返すライブを見逃したのが残念でならない。
 どうやら愛地球博の絡みで、日本ノルウェイ修好100周年記念のジャズウィーク2005と言うイベントが行われていたらしい。これはノルウェイ王室が主催で、企画が在日ノルウェイ王室大使館と言うパブリックな意味合いの強いものであり、ノルウェイを代表するジャズ・ボーカリストとしてセリアが王室からお墨付きを貰ったようなものだ。当然デビュー・シングルが日本で大ヒットしていると言ったネーム・バリューも考慮されてのことだろうが、それを差し引いても大したものだと思う。でも、その晴れの場が、万博以外はたった1日の新宿ピットイン(それも土曜の昼過ぎ)だけだったのは何とも淋しい限り。近い将来の再来日を願ってやまない。その時には、ちゃんとした告知をそれなりに打って欲しいし、彼女のムードや北欧jazzのイメージに似合った、もう少しお洒落なハコと演出もして欲しいものだよね。



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