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サラ・ヴォーン / "CRAZY AND MIXED UP" ~ 『枯葉』 [jazz / Female Vocal]

Sarah Vaughan.jpg
Artist : Sarah Vaughan
Title : "CRAZY AND MIXED UP" ※邦題 : 『枯葉』
Release : 1982
Style : jazz (female Vocal)
jazzっぽさ・・・★★★★★ (5/5p)
お気に入り度数・・・ ※最高は5つ


  1983年のことだったと記憶しているが、TOTOが82年作の『TOTO Ⅳ』でグラミー6部門を独占したその直後、FMラジオでその受賞アーティストの特集番組があった。当時高校生だった僕は、TOTOの受賞に関する話題が聞きたくて、夕方4時から放送されるその番組のために学校からすっ飛んで帰った記憶がある。その頃の我が家では、ラジオをタイマー録音する術が無かったのだ。

 ところが、僕が息を切らしながら帰るや否やラジオのスイッチを入れたその時には、残酷にもTOTOの話は既にすっかり終わってしまっていたらしかった。

 「うえ~、あんなに急いで帰ってきたのに間に合わなかったよおおぉ~」。ラジオの前で暫しがっくりと落胆・・・[もうやだ~(悲しい顔)]

 しかし、このラジオ番組はTOTOの代わりにとんでもなく格好良く素敵な2枚のジャズ・ボーカル・アルバムの紹介を僕にしてくれることとなる。そのウチの1枚がこれ。



 TOTOからいきなりサラ・ヴォーンである(苦笑)。
 一体どう言う番組構成の放送なのか意を疑ってしまうのだが、今となってはとっても有り難い、と言うか、よくよく考えてみれば僕の趣味趣向となんら変わらない節操の無さ[爆弾](笑)。

 確か、このアルバムのアタマ3曲が順番もそのままに流されたと記憶している。
“時さえ忘れて”のイントロ、ローランド・ハナのピアノに続いて聞こえて来た低い声。一応サラが女性歌手であるコトだけは元々知ってはいたけれど、ちゃんと聴くのは初めてだった。
「何だかオトコの声みたいだなぁ」が僕がサラの声に抱いた第一印象だ。
この曲も、今でこそ散々聴いて大好きな曲だが、初めて聴いた時のインパクトはそれほど大きくはなかった。

 ハマってしまったのは続く2曲。

 1曲目のメロー様式から一転、軽やかに②“THAT'S ALL”が始まる。ハナのご機嫌にスインギンなピアノ・ソロが印象的なこの曲は、当時鍵盤楽器の音と言えば「TOTOホルン」にどっぷり浸ってしまっていた典型的TOTO少年の耳に新鮮な驚きを与えてくれた。生ピ、ノリノリなんである。
初め抑え気味に歌っていた主役のサラは、1stコーラス終了後のこのハナのソロの後、徐々に声のトーンを上げて行く。気がつくとサラの声にさりげなくジョー・パスのギターが絡み付いていることに気付き僕の気持ちは高揚する。アンディ・シンプキンスのアップライト・ベースに体を揺さぶられ肩が自然と動いてしまう。囁くように鳴り続けるハロルド・ジョーンズのシンバルの音色のなんと心地良いことか・・・。
そして、サラが全てをスパっと断ち切るエンディングもめちゃくちゃ格好良かったのだ。

 そして驚きはさらに続く。と言うか、もう呆気に取られてしまったのが③“AUTUMN LEAVES”

 そう、ちょー有名曲「枯葉」なんである。
 でも、どう聴いても僕には「枯葉」に聞こえない「枯葉」だったんである(苦笑)。

 歌詞が無いんだもん、あれだけイメージが変えられていればそう聞こえなくても当たり前と言えばそんな気もするけれど、アレンジでこんなに原曲を崩しちゃうってのも初めての体験だった。鬼気迫るような、凄まじいまでのスキャット。そうスキャットなんて言葉もこの日までもちろん知らなかったよ(笑)。

 そのサラのスキャットに負けないくらいジョー・パスのギターにも驚いた。この曲のサラの声が発せられる前、イントロの長めのギター・ソロからすっかり彼に魅せられてしまった。パスのソロを引き継ぐようにサラがスキャットし始め、パスのギターと絡み合う。まるで2つの楽器が同時にソロを取っているようにも思える。二人とも低音から高音までジェットコースターで駆け抜けるような疾走感。すごい!。

 パスに関してはイバニーズのカタログで見知っていたので、彼がジャズ・ギタリストの大御所であることは分かっていたけれど、彼のギターを聴くのもこのアルバムが初めてだった。ディストーションやオーバードライブの歪んだギターに慣れ切った耳に響く、ごまかしようの無いナチュラルなそのフルアコーステキック・ギターの音色。流れるようなフィンガリングから繰り出される継ぎ目の無いフレーズ。なんちゅーギター弾くおぢいちゃん(笑・・・ごめんね)なんだよ、って。ほんとに・・・。

 
 そうなんだ。このアルバムでサラを支えるパス(g)、ハナ(p)、アンディ(b)、ハロルド(dr)の4人、当時みんなもう結構いい歳してる筈なのに、ご機嫌にグル-ヴィな演奏をしている。こんなお父さんたちが他にもたくさん居るのかしらん?。jazzって畏るべし・・・なんてこれで思わされてしまったワケなのだね。

Harold Hanna Pass and Andy.jpg
※写真左よりハロルド・ジョーンズ、ローランド・ハナ、ジョー・パス、アンディ・シンプキンス

 この頃の僕はTOTOやリトナーがお気に入り。ミュージシャンのクレジットはもちろん読むし、スタジオ・ミュージシャンが作るかっちりしたサウンドが大好きだった。プロは上手くて当たり前なんて思いながら、そんなサウンドばかり探していた。だから当時、この名人ばかりの演奏に、jazzなんか全然知らなくてもすんなり感動させられてしまう要素は充分満たしていたわけだが、それにしても彼らの演奏は、録音から23年を経た今聴いても新鮮な輝きを放っている。ああ、このメンツでどこでもいい。サラを小さなjazz clubで見たかったよ。僕がサラの生演奏に接することが出来たのは、横浜博のイベント・ライブただ1度きりだったもんなぁ・・・。

 そういえば、確かNHKがアルフィーかどこかのclubで録ったLIVEが当時TV放映されている。こーゆーもんこそ今、アーカイヴで見せて欲しいんだよおおおおぉぉぉ~(切望)。>NHK

 このアルバムは、残念ながらお小遣いがここまで回らずLPは買えなかった。都内に住む友達の家に遊びに行った折、近所にあった貸レコード店で偶然見つけて、彼の家ですぐにカセットに録音して貰った。僕はめちゃくちゃ嬉しかったが、友達は録音してる間中ずっと退屈そうだったっけ(笑)。

 その時初めて通して聴いたこのアルバムには、燃え上がった「枯葉」をクールダウンするかのように後半は美しきバラッドたちがズラリと並べられていた。④“LOVE DANCE”、⑤“THE ISLAND”、⑥“SEASONS”、⑧“美しすぎるあなた”のどれもが胸に染み入るような深い表現とヴォイス・コントロールを以て歌われている。そして再び軽やかなスイング・ナンバー⑦“IN LOVE IN VAIN”での朗々としたサラの歌唱に引き込まれ、このアルバムの全てが堪らなく好きになって行った。

 ただ当時の日本ではこのアルバムは今ひとつ評価が芳しくなかったような話も聞いていた。きっと、哀愁を帯びたシャンソンとしての「枯葉」のイメージが強く定着していたせいだろう。サラの解釈はあまりにも衝撃的で刺激が強すぎたのではないか。僕がすんなり入り込んで行けたのも、何も知らず、先入観も持たず、ただただサラの歌に感動出来たからなのかも知れない。



 
 その後大学に入ってからアルバイトして、初めてCDプレーヤーの付いたSONYのリバティーというコンポを買った。プレーヤー買ったのに、聴くCDが1枚も無いんじゃお話にならない。その日の秋葉原からの帰り途、わざわざ遠回りして渋谷・公園通りにあったDiskユニオンに立ち寄り、迷わずこのアルバムを買った。何故この店だったのかと言えば、当時僕はここの近所のファイヤーストリートにある小さな洋服屋でバイトをしていて、プレーヤーも持っていないくせにこの店に通っては、何度も棚を眺めて在庫があるのを確認済みだったから(笑)。そう、1986年、僕の初めて買った記念すべきCDがこの『CRAZY AND MIXED UP』だったのだ。コンポが配送で届くまでの数日が、やたらと長く感じて待ち遠しかったなぁ。

 今にして思えば、ボーカルでインプロビゼーションしてる作品に触れたのも、サラの“AUTUMN LEAVES”が初めてだったように思う。僕にはどうあっても忘れられない1曲だ。この「枯葉」を聴いた時のショックを超える作品には、20年を経た今でもなかなか出会えていない。この先、果たして僕の中でサラを超える女性ボーカリストは現れるのだろうか、な?。





[るんるん]下のジャケットをクリックすると部分的試聴が可能なAmazonのサイトが別ウインドウで開きます。

Crazy and Mixed Up

Crazy and Mixed Up

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Pablo
  • 発売日: 1991/07/01
  • メディア: CD


1. I Didn't Know What Time It Was
2. That's All
3. Autumn Leaves
4. Love Dance
5. The Island
6. Seasons
7. In Love In Vain
8. You Are Too Beautiful

■サラ・ヴォーン(vo)、ジョー・パス(g)、ローランド・ハナ(p)、アンディ・シンプキンス(b)、ハロルド・ジョーンズ(dr)


枯葉

枯葉

  • アーティスト: ジョー・パス,ローランド・ハナ,アンディ・シンプキンス,ハロルド・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2005/09/22
  • メディア: CD



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