ジョイス・クーリング / "THIS GIRL'S GOT TO PLAY" [Contemporary / Fusion]
Artist : Joyce Cooling
Title : "THIS GIRL'S GOT TO PLAY"
Release : 2004
Style : fusion (guitar & female vocal)
◆jazzっぽさ・・・★★☆☆☆ (2/5p)
◆お気に入り度数・・・
※最高は5つ
2004年のお気に入り第2弾は、世間的にはスムース・ジャズと呼ばれるジャンルにカテゴライズされるだろう、このアルバム。
「SMOOTH JAZZ」って、とても嫌いな言葉だ。
メロディーだけが何となしにさらさらと流れてゆくだけで、心に感じさせてくれるものがあまりに希薄な感じがする。確かに、フュージョンとスムース・ジャズの境は曖昧だから、食べず嫌いも大いに有るかも知れない。でもアルバム丸ごと、金太郎飴みたいに表情の変化に乏しい音楽を聴き続けるのは堪ったもんじゃないよね。
「ドライブとかでさ、BGMとしてかけておくんだから、感情移入が少なくてすむんだもん。逆にいいんじゃない?」なんて言うヒトも居るけれど、僕はクルマの中でこそ常に好きな音楽を、ずっと聴き続けていたい。ただぼんやりと流しているだけの音楽をお金払って買うなんてイヤだよ。それならラジオで充分コト足りてしまう。
僕はフュージョンって音楽は好きだけど、スムース・ジャズは好きじゃない。でも、きっと端から見れば、どっちも似たような音楽。これで語ると、きっとそれだけでものすごく長くなってしまうので今日はこれ以上書かないけれど、「スムース・ジャズの・・・」なんて枕詞がついていると買う気がハナから起きないんだなぁ。だから危うくこのアルバムも聴き逃すところだった。
実はこのジョイス・クーリングだって、積極的に聴いてみようって思ってなかった。
だって、彼女のアルバムレビューや関連する記事を見れば、必ずそこには「スムース・ジャズ・シーンで人気の女性ギタリスト」って紹介されているから。
じゃ、なんで買ったのかと言えば、仕事中、ヨ○バシカメラにPC関連の消耗品買いに行ったんだけど、目当ての物が売っていなかった。で、このまま何も買わずに帰って駐車場代600円払うくらいなら、駐車券目当てに2000円以上の買い物しよう、それならCDがいちばん!、と言う、よく有りがちなケチなお話からなんだな・・・(苦笑)。
まあ、ジャズとかアダルトコンテンポラリ的な作品は、元よりこの店には数は置いていないので、初めからポピュラーの棚を覗いていると、多分店員さんがジャンル分けを間違えたんでしょう、何故かジョイスの作品がここに。時間も無いし、ギターだし、歌モノも数曲有るって聞いてるし、ええい、これでいいや~。そんないい加減な買い方だった。
で、早速クルマに戻って封を破り即プレイ。①“Expression”が始まると、おっ、いきなりガット・ギターのオクターブ・カッティングから入りますか~、気持ちいいじゃん。メロディーはキャッチーだし。ギター・ソロは音色を変えるためにソリッド系に持ち替えたナチュラルトーンで。あまり長くはないんだけど、途切れることなくフィンガーボード上を四指が走りまわるのが目に浮かぶjazzyなフレーズが心地良い。
思ってたよりも、ちゃんとしたフュージョンだ。ちょっと斜に構えていた僕は、この1曲目を聴いただけで嬉しくなった。ここのところ買っていたインストものに、遣り切れなくなる様な物足りなさを感じていただけに、なんとも新鮮な心地と、久し振りに「聴けそう」な期待感。
彼女のこのアルバム、全編をを通してインストもののメロディーの押し出しが強い。アタマからの掴みがいいから、普通のムードだけのスムース・ジャズのそれと違って耳に残るんだろう。さらっと流れてゆかない。スムース・ジャズのフォーマットのせいで曲が4分前後に抑えられてしまっているのが何とももったいないなぁ。けっこうイナタいソロの途中、残念ながらお時間です・・・みたいなお約束のフェードアウトがうらめしいよ。
そして歌モノが結構いい味してます。④“No More Blues”はその名のとおりにブルージーでなかなかに渋いトラック。これはジャズ系アーティストがよく取り上げるカルロス・ジョビンの超有名ボサとは同名異曲でジョイスのオリジナル。彼女自身が弾くアップライト・ベースとブラシ、エレピの上で少々ダルいイメージでjazzyに歌う。なんでもラジオでのオンエアとか余計な一切を考えず、自分がやりたいままにレコーディングしてみたとか。エンディングのオクターブ奏法によるギターソロもウェスさながらバッチリはまってる。
声はケヴィン・レトウを少し低くしたような感じかな。彼女やマリリン・スコットなんかのアダルトコンテンポラリ系の女性ボーカリストが好きなら、まずジョイスの声を嫌いだとは言わないでしょう。AOR系は女性ボーカル少なくて貴重(?)だもんね。
このアルバムのタイトル・チューン⑥の“This Girl's Got To Play”は彼女自らの私小説的ストーリー。実は彼女の前作『サード・ウィッシュ』は2001年にGRPからリリースされているんだけど、そのリリースのまさに当日、あの「9.11事件」が起きてしまった。家族がニューヨーク出身で、自身も育ったあの場所で起こった、あまりにもショッキングな事件に、音楽という自分の職業に無力感と疑問を感じ、一時は音楽を止めようとまで思い詰めてしまったんだとか。
そんな想いを全て吹っ切るかのように再スタートを切った彼女の歌には、ラジオで流して欲しいとか「売らんかな」的ないやらしさの欠片も感じられない。スムース・ジャズは嫌いだ、って口にするフュージョン好きにきちんととお勧め出来る作品だ。意外にも硬派で、決して媚びることなく、なおかつ爽やかなギターアルバムに仕上がっている。
「プレイせずにはいられないのよ 私には音楽しかないの」
気持ちいいよね、こんなオンナノコも。
若い女性が持つには多分に地味な味わいのバタースコッチ色したストラトも、彼女が持つとそのさっぱりした具合が妙にハマってカッコ良く見えて来るから不思議だね。
タグ:ジョイス・クーリング フュージョン
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